子どもの頃から絵を描くことやモノを作ることが好きだったので、手に職をつけられるような仕事に就きたいと考えていました。そんな時、新聞の一面で見つけたのが「福井洋傘」の広告でした。広告を見たのは梅雨前でしたが、実際に就職の面接を受けたのは、それから半年後のこと。なぜか、ずっと気になっていたので、一度面接を受けてみようと思ったのです。そこで社長と直接お話しし、デザインコンテストを開きたいと思っていることなどいろいろな話を伺い、さらに、実際に作っている作業場の様子も見せていただくことができました。そこで、一つひとつ丁寧に手作りしている福井洋傘のモノづくりに触れ、説明を受けていくうちに「お客様一人ひとりに合わせた傘を作る」ことの素晴らしさ、手間はかかるけれど、他のモノにはない手作りの良さに魅力を感じ、この会社への就職を決めました。
お客様の要望に応じて一からオーダーメイドで作るので、作りながらだんだん形になっていくのを実感できるのが楽しいですね。そして、1本の「傘」としてできあがった時にはやりがいを感じますし、お礼のハガキやメールをいただいたり、修理の際などに直接感謝の言葉が聞けた時には、大きな喜びを感じます。また、私が入社してからスタートした「傘デザインコンテスト」では、実際に商品化するにあたって、生地や手元などの各部品もいちから作り、製品化します。作業は大変ではありますが、その分、試行錯誤の末にできあがった作品を見ると「大変だったけど、頑張った甲斐があったな」と思います。傘は贈り物や大切な記念日などに購入されることが多く、納期に追われることもありますが、一つひとつ心を込めてお作りすることで、傘を通じた感動や喜びをお客様に提供できればと思っています。
初心を忘れないことです。慣れることも大切だと思いますが、過信は禁物です。布地の張りの強さや骨など、すべてがオーダーメイドの傘作りは、1ミリ単位の縫い目の具合でできあがりが変わってしまうほど、とても細かな作業です。ですから、「以前はできていたから大丈夫」と過信してしまうのではなく、「以前もできていたけど、今度もちゃんとできているか、前よりも良くなっているか」と、毎回振り返り、確認しながら作っていくことが大切だと思っています。気持ちは新人の時の初心を忘れず、腕は熟練の職人になれるよう、日々精進していきたいと思っています。